アクリル絵の具の耐光性実験 ガッシュ, 100円ショップの絵の具と比較

 

とある会社に勤めていた時,
絵を販売する業者が会社に来ました。

 

勧められたのはビーズを使った複製画でした。

 

キラキラして美しいその複製画を,
上司が買って事務所に飾りました。

値段は2~3万円くらいだったように
記憶しています。

 

ところが,その絵は半年もたたないうちに
何が描いてあったかわからないくらい
退色してしまいました。

 

窓が大きく明るい事務所だったので,
陽が当たったことによる劣化だと思います。

 

絵画に陽が当てるのがいけないことは
もちろん知っていましたが,

ある程度の値段のものが
あまりに速く変化してしまったことに
大変驚きました。

 

日光が絵画にとって一番の大敵だと
自分の目で確認した出来事でした。

 

 

大学生の時,
絵画研究室の教授が

「絵の具を混色して時間が経つと,
どのくらい変色するか実験してるんだ。

これが20年くらい経った
状態なんだけどね。」

と,絵の具を塗ったキャンバスを
見せてくださったことがあります。

 

20年?!

 

その頃20歳くらいだった私は,
1つの実験が自分が生きてきたのと
同じ長さ続いていることに驚きました。

というか,

よくそんな気の長いことする気になるなぁ

と,学生みんな
唖然としていたように思います。

 

ですが,

自分が描いた絵が20年以上の経過した今,
あの時の教授の実験が
必要なものであったことを実感しています。

 

 

作品は私にとって子供のような,
自分の分身のようなものです。

自分の身を削るようにして
1枚1枚の絵を描いてきました。

 

自分が死んでも,
私の代わりにずっと
メッセージをを伝え続けてほしい。

そういう存在なのです。

 

そんな大切な作品が,
たった20年で変色してしまったら,
どれだけ悲しい思いをするでしょう。

 

誰かが買ってくださった絵が退色して,
さえない色になっているとしたら,

どれほど申し訳ない気持ちになるでしょう。

 

 

テーマや構図など,
絵を見る観点はいろいろあると思います。

 

その中でも,
色が人に与える印象は大きく,

それが変わってしまったら,
その絵の持つ力は
全く違ったものになるでしょう。

 

できることなら,何百年も
変わらないでいてほしい。

 

だから

私は短時間でも直射日光の当たる場所に
作品を置いたりはしません。

 

直射日光が当たらなくても,
反射などで間接的な光はどうやっても
入ってきます。

そんな光も長時間当たると影響があります。

 

なので,絵を保管する場所は,
間接的な陽も
できるだけ入らない場所にするよう
気をつけています。

 

そういう風に心がけているため,

25年前に描いた絵にも,
今のところ色の変化は全く感じません。

 

私が使っているアクリル絵の具は
元々屋外で使用することを目的に
開発された絵の具で,
他の絵の具と比べると耐光性は高いです。

 

ひび割れなども起こりにくく,
他のどんな絵の具よりも
堅牢な絵の具と言われています。

 

でも,やはりどんなものも
長い時間の中で劣化していくのを
避けることはできません。

 

もし陽の当たるところに置いていた場合,
どのくらい変色せず耐えられるのか
実験してみたいと思いました。

 

 

「アクリル画を始めたいのですが,
この絵の具を使ってもいいですか?」

という質問の多いアクリルガッシュと,
100円ショップのアクリル絵の具についても
比較のために入れてみました。

 

後で詳しくお話ししますが,
これらは元々作られた目的が違います。

長く大切にしたい絵画作品に使用することを
目的に作られたものではないのです。

 

用途が違うので,当然,陽に当てれば
比較的早く劣化することが予想されます。

 

用途が違うことを確認するための比較であり

これらの絵の具のあら探しをするために
比較するわけではないことをご理解ください。

 

 

アクリル絵の具 耐光性実験の目的

 

25年くらい使用しているアクリル絵の具。

今まで自分の使用方法が間違った時以外には
使用していて困ったことはありません。

 

最初の頃に描いた絵も,
できるだけ環境に気をつけて
保管しているため,
変色や劣化も感じていません。

 

そんなわけで,
私はアクリル絵の具を
とても信頼しています。

 

でも時に,作品を人の手にゆだねなけれ
いけない時があります。

 

寄贈したり販売したり場合は,
受け取ってくださった方の判断で
展示や保管をされるわけです。

 

まず雨に当たることはないと思いますが,
陽に当たることはあるかもしれません。

 

遠方で展示する場合など,
現地のスタッフの方や運搬してくださる方に
お任せするわけですが,

額から外して扱われた場合は,
絵の具が剥げるほどの鋭い傷がついて戻り,
その後数回にわたり
カビが生えたことがあります。

 

アクリル絵の具自体に
カビが発生するとは考えにくいので,

絵の近くで汁物でも食べ,
しぶきが散っていたのでは?
と思っています。

 

これがアクリル絵の具だったから
表面を何度か水拭きして収まりましたが,
水彩絵の具であれば,
諦めるしかない状態でした。

 

こんな風に,何度かヒヤヒヤしたり,
非常に悲しい思いをしたことがあるわけです。

 

そんなこともあり,
今後の自分の作品の将来を考えて,
実験をしてみたいと思いました。

 

絵を買ってくださった方や,
絵を習っている方にも
役立つ実験になればと思います。

 

 

耐光性記号が表記してあるのですから,
各社で実験済みであることも承知しています。

 

どの絵の具も,
簡単に劣化することはないと思いますが,
次の3つの目的を持って実験してみます。

 

①アクリル絵の具が耐光性記号通り
 日光に強いことを確認する

 

②画材専門の会社で作ったアクリル絵の具と
 100円ショップで作ったアクリル絵の具は
 使用目的が違うため,耐久性に
 値段なりの差があることを確認する

 

⓷アクリルガッシュは
 屋内で使用する絵の具であるため,
 アクリル絵の具より日光の影響を
 受けやすいことを確認する

 

その他にも,

他社のジェッソの上に乗せた絵の具が

定着するかどうかなども
確認できればと思います。

 

アクリル絵の具耐光性実験に使う 絵の具と支持体

 

今回使用する絵の具

 

私が20年以上愛用してきて,
ほぼ全色持っている
ホルベインのアクリリックカラー
 ヘビーボディ(一部旧タイプあり)

 

アクリル絵の具の中でも
特に質や発色が良いと言われている
リキテックスプライム

 

工作などに手軽に使える
100円ショップのアクリル絵の具

 

そして,ちょっと用途の違う

④ホルベイン アクリルガッシュ

⑤ターナー アクリルガッシュ

 

それぞれ,赤・黄・緑・青・茶・黒・白

①は代表的な色とよく使う色を5色~3色

②は12色セットを中心に

④⑤は手元にある色だけ

 

新しいものを揃えると高いので,
すべて家にあるものを使用します。

ガッシュは欠けている色もありますが,
了承いただければと思います。

 

100円ショップの絵の具だけは
全く持っていなかったので買いました。

 

 

 

支持体

 

①アクリルキャンバス
下塗りなし

 

②museケント紙ボード

の2種類です。

 

白の絵の具は白いボードに
直に塗ると見えにくいので,

その部分だけ
ウチにあったホルベインの
ブロンズのジェッソで下塗りしました。

 

この部分は
他社製品は不利かもしれないですね。

アクリル絵の具とメジウム類は
他社製品を受け付けない場合があるので,
相性が悪ければ剥離するかもしれません。

 

それも含めて様子を見たいと思います。

 

 

それぞれの絵の具の用途や耐光性の表記など

 

それぞれの絵の具には,
チューブにいろいろな情報が
表示されています。

 

今回実験する耐光性以外にも,
透明性や価格帯,毒性などが書いてあります。

 

今回はわかりやすくするため,
色の名前と耐光性だけを描き込みました。

 

よく使うホルベインだけは
自分に分かりやすくするため
価格帯も記入しています。

 

 

各絵の具について
次にそれぞれ説明します。

 

 

① ホルベインアクリリックカラー
  ヘビーボディ

私が20年以上愛用している
信頼できる絵の具です。

 

使用している間に,
2度モデルチェンジしました。

 

今回使用したものは
ほとんど最新の物ですが,
一部,ひとつ前のタイプのものが
混ざっています。

その色には
色の名前のところに(旧)と書いています。

 

耐光性記号がチューブの裏に
■の数4~0の5段階で表示してあります。

■の数が多いほど耐光性が高いです。

支持体には■の数を1~4の数字で
書いています。

耐光性が2,3の色もかなりありますね。

 

アルファベットは価格帯です。
私が分類しやすいために記入しただけで,
今回の実験にはあまり関係ありません。

 

 

② リキテックスプライム

耐光性記号がチューブの裏に
Ⅰ,Ⅱで表示されています。

表示のないものは実験中だそうです。

耐光性がⅠと表記してある色に関しては
屋外で使用しても問題ないと
リキテックスのHPに書かれています。↓

http://www.liquitex.jp/faq/detail/9

すごいですね。

 

今回の実験に入れた色の中では,

ナフソールレッドライトがⅡで,

フタログリーンイエローシェードが
実験中になっています。

 

それ以外はすべてⅠです。

 

 

⓷ ダイソーのアクリル絵の具

 

耐光性記号などは表記されていません。

 

本格的なアクリル絵の具を揃えると
かなりお金がかかるので,

たくさんの人にアクリル絵の具を
手軽に楽しんでもらうことを目的に
作られた絵の具です。

 

長期間保存することや
屋外で使用することを目的に
作られたものではないので,
お値段なりの品質でよいでしょう。

 

だから,そこまで詳しい情報がなくても
別に不審にも感じません。

 

画材だけを作っている会社の
しっかりしたお値段の製品と
同じレベルの品質であったら逆に困りますね。

 

 

④と⑤のアクリルガッシュですが,

これは室内でイラストやポスター等を
描くことを目的に作られた絵の具です。

 

なので,アクリル絵の具より
耐光性が低いのは当然です。

 

ひび割れないアクリル絵の具と違い,
厚塗りすればひび割れます。

 

今回はアクリル絵の具との性質の違いを
確認するために入れさせてもらいました。

 

ガッシュにも耐光性記号が表記されています。

 

④のホルベインも ⑤のターナーも

耐光性は❆の数で表示されています。

 

ほとんどが2,3で,
ホルベインのバーントシェンナだけが4です。

同じホルベイン同士で比べても,
ガッシュの方が
耐光性の数字の平均が低いですね。

 

 

 

アクリル絵の具 耐光性実験の方法

キャンバス 2021年8月7日
ケント紙ボード 2021年8月7日

 

キャンバスとケントボードに
前述の絵の具を並べて塗り,
日当たりの良い場所に置いておきます。

1ヶ月

3ヶ月

半年

1年

という節目で写真を撮り,
色の変化を比較して,
経過を記事に追加していこうと思います。

 

写真を撮る場所や時間,天候などは
できるだけ揃えて,
写真によって色の違いが出ないよう
気をつけます。

 

 

アクリル絵の具耐光性実験 1ケ月半経過

キャンバス 2021年9月23日
キャンバス 2021年8月7日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケント紙ボード 2021年9月23日
ケント紙ボード 2021年8月7日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験を始めて数日後から
2週間以上雨が降り続き、
全く陽に当てることができませんでした。

そのため、1ケ月では何の変化も見られず、
最初の比較は1ケ月半経過して行いました。

 

さすがアクリル絵の具!

ほとんど変化は見られません。

 

が、特に日光に弱いと聞いていた赤に、
微妙な変化が表れ始めました。

100円ショップの赤が
少し薄くなっています。

 

変化したのはキャンバスの方のみ。

ケント紙ボードの方には変化はありません。

 

アクリル絵の具耐光性実験 3ケ月経過

キャンバス 2021年11月6日
キャンバス 2021年8月7日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケント紙ボード 2021年11月6日
ケント紙ボード 2021年8月7日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3か月が経過しました。

 

前回変化し始めていたキャンバスの百円ショップ赤だけ
退色が進みましたが、
他の色には目に見える変化はありません。

 

100円ショップのアクリル絵の具も、
キャンバスの赤以外は変化していません。

お値段以上の品質ですね。

 

同じ絵の具でも、キャンバスに描いたのと
ケント紙ボードに描いたので
耐光性がずいぶん違うのが意外です。

理由を調べてみたいと思います。

 

 

秋になって陽射しが弱くなり、
日照時間も短くなりました。

これからは今まで以上に
変化が起こりにくいと思いますが、
また気づいたことがあればご報告します。

 

アクリル絵の具耐光性実験 6ケ月経過

キャンバス 2021年8月7日
キャンバス 2022年2月6日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケント紙ボード 2021年8月7日
ケント紙ボード 2022年2月6日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6か月が経過しました。

 

キャンバスに乗せた百円ショップの赤は
どんどん退色が進み、
ケント紙ボードの赤も部分的に
色が薄くなってきました。

 

しかしやはり、
他の色には目に見える変化はありません。
さすがアクリル絵の具です。

 

100円ショップのアクリル絵の具も、
赤以外は変化していません。

これはすごいことだと思います。

 

これから暖かくなり、
日差しも強くなってきます。

また何か変化があればお知らせします。

 

 

まとめ

 

今回の実験にとりかかるにあたって,
気づいたことや勉強になったことが
たくさんありました。

 

まず,開けたことのないチューブが
たくさんあったこと。

いつか使うかな,と全色揃えても,
使ったことがない色は
怖くて使わないままだったのです。

 

そして,使ったことがある色も

混色して使うことはあっても,
単色で使うことはほとんどないので,
色の特徴がよくわからないまま
使用していました。

 

いつも時間に余裕のない中で
絵を描いてきたので,
25年も行き当たりばったりで,
アクリル絵の具と付き合ってきていました。

 

今回初めて
単色でキャンバスと紙に塗ってみて,
それぞれの色の特徴が分かって
とても勉強になりました。

 

特に,透明性は,
単色で使用するとよくわかりました。

 

 

今回は水もメジウムも使わなかったので,
キレイに塗るのはとても難しかったです。

 

特に透明性の高い色はムラになりましたが,
濃いところと薄いところの色の差も
わかった方がいいかと,
敢えてそのままにしました。

 

 

100円ショップのアクリル絵の具と
アクリルガッシュは
屋外使用や長期保存用の絵の具ではないため
比較すると早く変色や退色を
起こすことが予想されます。

 

でも,それは
あくまで屋外使用を目的とした絵の具と
比較した場合で,

「結構頑張ってるじゃん!」

という結果が出るかもしれないという
期待もしています。

 

初めから性質が違うことを知った上で
それを確認するための比較なので,
早く変色や退色を起こしても,
質が悪いということではありません。

誤解のないようにお願いします。

 

 

永年愛用してきたアクリル絵の具を
私は信頼しています。

わざと陽に当てても,
簡単には変色しないはずです。

リキテックスプライムは
耐光性Ⅰと表示されているものは
屋外の使用も大丈夫ということですから,
いくら陽に当てても
びくともしないだろうと予想します。

これも比較の対象として
入れさせてもらった感じですね。

 

私が愛用してきたホルベインも,
変化したと感じるまでには
かなりの時間が必要でしょう。

 

できれば,末永く
変わらないでほしい。(祈)

 

 

大学時代の教授を見習い,
最低でも20年は
この実験を続けてみようと思います。

 

そして,
実験が続けられる状況である限り,
行けるところまで報告を続けます。

 

気長~におつきあいくださると嬉しいです。