初心者も描けるペットの肖像画講座 第3回 魅力ある構図作りと転写方法

 

こんにちは,麻真です。

 

第2回の講座では,
額装して飾ることを考えて,
画材や絵のサイズを決めようという
お話をさせていただきました。

 

キャンバスに描くか,紙に描くか,
どんな画材を使って
どのくらいの大きさで描きたいか,
大体のイメージはできましたか?

 

 

今回は,撮った写真をもとに,
絵の構図を決め,転写する作業について
お話ししようと思います。

 

 

私はアクリル画を描いているので,
アクリル兼用キャンバスを使いながらの
お話になります。

 

 

今回の講座では,

① 構図の大切さと構図を考えるコツ

② 初心者にはF3号キャンバスがおススメ

③ 写真を選んで構図を決める

④ 転写の方法

の順番で,

構図を決めてキャンバスや用紙に
下描きをするところまでやっていきます。

 

では,始めましょう!

 

① 構図の大切さと構図を考えるコツ

 

絵を描くとき,まず大切なのが構図です。
これがよくないと,
いくら緻密に上手く描けた絵も
とても残念に見えてしまいます。

 

しかも,途中で修正することが
できないので,
時間をかけた力作ほど
もったいないことになります。

 

 

主役が小さくなってしまった場合,
紙なら描き終わってから
余白を切ることもできますが,
キャンバスはそんなことはできません。

 

なので,最初から計画的に
構図を考えて描き始めることが大切です。

 

 

ではどんなことに気をつけて
構図を決めればよいのでしょう。

 

よく見かける,残念だなぁと感じる
構図の失敗例をいくつか挙げてみます。

 

 

例1.主役が画面の下の辺にくっついて,
額縁をすり抜けて落ちてしまいそう。

主役の下には余裕を持たせましょう。

 

 

例2.顔の前にほとんど空間がなく,
空気が少なくて息苦しく感じる。

顔が向いているほうには,
空間を少し多めにとりましょう。

 

 

例3.ど真ん中に描きすぎて,
構図に動きや変化を感じない。

あまり左右どちらかに寄りすぎても
いけませんが,
ほんの少し,左右どちらかに寄せるほうが
画面に変化や動きが出ます。

 

先ほど,顔が向いているほうを
ゆったり開けたほうがいいというお話を
しましたね。

 

顔が横を向いている場合は,
向いている側の空間を多めにとる,
というふうに考えるといいでしょう。

 

 

 

主役が小さくなってしまうというのも,

初心者がやりがちな失敗です。

 

絵を仕上げていくとき,
結構苦労するのが実は背景の処理です。

 

描きたいペットさんは楽しく描けても,
背景をどうすればいいかわからなくて
悩んでしまうってことが起こるわけです。

 

主役が小さくなって,
背景の面積が増えるほど,
その悩みはより大きくなります。

 

色をつけるにしても,
ポスターカラーのように
1色でベタ塗りというのも味気ないし,

ベタ塗りすると,筆の跡が残ったり,
色ムラができたりしやすいですよね。

 

あえて何もせず,
真っ白にする描き方もあると思いますが,
それならなおさら,
空白の部分の面積が多いと
さびしい絵になってしまいます。

 

 

今回描くのはペットさんの肖像画です。

 

主役のペットさんを大きく,
空白を少なめにする構図にしましょう。

 

といっても,まったく余白がないのも
窮屈な感じになります。

入るけど窮屈すぎるので, ひとつ大きいサイズに描くことにしました。

 

特に,先ほどの例1.のように

下の辺に主役がくっついていると,
主役が画面から落ちてしまいそうな
不安定な構図になってしまいます。

 

F3号くらいの大きさなら,
下は3㎝くらいは空けましょう

F8号くらいなら,5㎝くらい
空けてもいいと思います。

 

 

そして,もうひとつ

知っておいてほしいことがあります。

 

作品が完成したら,
額に入れて飾りたいですよね?

 

額に入れると,キャンバスの端が

各辺5㎜くらいずつ隠れます。

だから,ちゃんと見せたいものは,
あんまり端っこまで描かないでください。

 

特に小さい絵の場合は,5㎜切れると
作品にかなり影響します。

 

絵の表にサインを入れる場合なども,
下にくっつけないようにしてください。

2㎝くらい空けてサインしましょう。

 

 

私はキャンバスの周囲5㎜に大切なものが
かからないように,最初から薄く線を引き,

「ここから外は隠れるんだ」

と,意識して描いています。

 

 

まとめると,

1.余白の面積に気を配る
2.下に余裕を持たせる
3.顔が向いている方に空間を作る
4.主役をど真ん中から少し外す
5.額縁に入ると端が5㎜くらい切れる

という感じになります。

 

どうやって構図を決めていくか,
なんとなくわかっていただけたでしょうか?

 

構図についてかなり勉強した人は,
黄金分割なども取り入れながら
計算して構図を決めたりしている場合も
あります。

 

最初はそこまで考えると
しんどくなってくるので,

 

この5点くらいに注意して,
構図を考えていくといいでしょう。

 

 

 

この章で使った写真のように,
私は,描きたい大きさに印刷した写真を
必要なところだけ切り抜き,
キャンバスと同じの大きさの紙の上で
動かしてみます。

 

そうやって,一番しっくりくる場所を探すと
失敗が少ないです。

 

描いてから描き直すと時間もかかるし,
キャンバスや紙も傷むので,
できるだけ無駄に消しゴムは使わないように
しましょう。

 

使う消しゴムによっては,
キャンバスの表面に微妙に残り,
後で作品に影響が出ることさえありますので
気をつけてくださいね。

 

 

② 初心者にはF3号キャンバスがおススメ

 

キャンバスに初めて描く人には
F3号をお勧めします。

 

紙に描く人も,F3号大か,
ケント紙ならA4サイズをお勧めします。

 

なぜかというと,この大きさなら
家庭用によくあるプリンターで印刷できる
A4サイズのコピー用紙がうまく利用できて
簡単に構図を調整できるからです。

 

 

F3号キャンバスは額縁に入ると,
端が少しずつ隠れて
ちょうどA4サイズのコピー用紙の
長いほうの辺を3㎝折ったくらいの
大きさになります。

 

パソコンの画面でも
写真の大きさの調整がしやすく,
プリンターから出てきた写真を
そのまま転写できるからとても楽なのです。

 

この方法については,
④ 転写で詳しく説明します。

 

飾るときのことを考えても,
額に入れるとキャンバスよりも
かなり大きくなるので,
F3号くらいが飾りやすいです。

第2回 額装して飾れる絵を描くには
参照 https://d-marron.com/lesson2

 

これより小さいと,今度は小さすぎて
犬や猫などの動物を描くのが難しくなります。

 

特にこだわりがないなら,
最初はF3号を描いてみることを
お勧めします。

 

⓷ 写真を選んで構図を決める

 

いよいよ写真を選んで,
キャンバスや紙の上で
構図を考えていきましょう。

 

① 構図の大切さと構図を考えるコツ
でお話ししたように,
構図はとても大切です。

 

制作が進んでから修正することもできません。

 

「せっかくうまく描けているのに,
もったいない!!」
という作品にならないように,
最初に構図をよく練って描き始めましょう。

 

 

私は構図を決めるとき
描きたい絵によって
幾通りかの方法を使っています。

 

比の計算や倍率の計算なども必要です。

 

今回は,初心者の方も抵抗がないように,
あまり計算のいらない方法を紹介します。

 

 

 

では,次の手順に従って,
構図を決めていきましょう。

 

1. 写真を選ぶ

2.写真を描く大きさにプリントする

3.写真の必要なところを切り取る

4.それをキャンバスと同じ大きさの
 紙の上に置いて位置を決める

 

だいたいこのような流れになります。

 

3.と4.の作業は,選んだ写真を
背景も含めてそのまま描く場合は
必要ありません。

 

背景に写っているものを全く描かない,
または,背景を写真と変える場合には
3.4.のひと手間をかけたほうが,
バランスのいい構図になると思います。

 

なぜ3.4.の作業が必要なのか
という理由をお話しします。

 

選んだ写真を描く大きさに拡大して
構図を考えみたとします。

 

背景もほぼその通りに描くのであれば,
今見ているそのままの構図になるので,
その用紙上でいい構図になっていれば
そのまま仕上がっていきますよね。

 

でも,背景にあるものを描かない場合は
違ってきます。

 

その画面は,背景のモノがあるから
バランスよく見えているのかもしれません。

 

背景にある線や色をなくしても
構図のバランスが良いのかを確認するため,
一度,描かないものを除いた状態で
構図を見てみるほうがいいのです。

 

 

写真の背景をそのまま描かないとすれば,

 

色のグラデーションで
空間の感じを表現する

 

草原などの写真を使い,
別の背景を合成する 等,

 

考えなければならないことが増えます。

 

① 構図の大切さと構図を考えるコツ

でも少し触れましたが,
私は主役を描くより,
背景の処理に悩むことのほうが多いです。

 

背景が広いとあとで苦労することになるので
主役のペットさんをできるだけ大きく描いて
空間を減らすほうがいいでしょう。

 

背景を考えるのが楽しいの!

 

という方は,
わが子を素敵な景色の中で
遊ばせてあげてください。

 

うわぁ,大変そう~!!

 

と思った方は,今回は背景もそのまま描ける
写真を選ぶか,背景の面積を減らしましょう。

 

「ゴミが写ってる」
「家族の足先が写ってる」

程度のことであれば,
それを描かなければいいだけなので,
写真のその部分を手などで隠して
構図のバランスを見てください。

 

背景の家具の位置,
ちょっとずらしたほうがバランスがいいかも

なんてことも,よくあります。
そんな時は遠慮なくずらしてください。

 

写真に写っているものを
都合のいいように変えて描けるのも
絵のいいところです。

 

 

それでは,写真を選んでいきましょう!

 

 

1.写真を選ぶ

ではまず,撮った写真の中から
「これを描きたい!」
という写真を一枚選んでください。

 

先ほどの,
背景をどうするかという話も考えて
選びましょう。

 

もちろん,飼い主さんが気に入った写真を
使うのが一番です。

 

私から助言をするとすれば,
次の2つの条件を満たしている写真を選ぶと
魅力のある絵が描ける思います。

 

① 視線がこちらを向いている

② その子らしい表情やポーズ

この2つです。

 

①の「視線がこちらを向いている」写真を
使って絵を描くと,飾ったとき
いつもこちらを見てくれている
絵になります。

 

どこから見ても,こちらを向いてるように
見えるから不思議です。

目が合うと,つい話しかけたくなります。

 

 

②の「その子らしい表情やポーズ」は,
そういう写真を選んでいるかどうか
一応確認してもらいたいと思って入れました。

 

私に言われなくても,ほとんどの方が
そんな写真を選ばれていると思います。
わが子のお気に入りの写真ですから。

 

 

あとは,
描きたい部分が全部写っている写真を
選ぶのがいいと思います。

 

足の先など,
一部分がちょっと切れてしまっている場合,
別の写真を参考にしながら補修しても
自然に仕上げるのはなかなか難しいです。

 

私もいつも苦労するので,
挑戦するのは慣れてからのほうが
いいかと思います。

 

 

2.写真を描く大きさにプリントする

 

写真が決まったら,
その写真を描きたい大きさにプリントします。

 

ここでプリントする用紙は
構図を決めるためのものです。

 

あとで切ったり貼ったり
転写したりするので,
厚い写真用紙などでなく
薄いコピー用紙のほうがいいです。

 

色をつけるときに見る写真が
あとで必要になりますが,それは
もう1枚別に,発色のいい写真用紙などで
プリントしましょう。

 

 

先ほどお勧めした3号の大きさで描く時は,
A4サイズのコピー用紙にプリントすると
ちょうどいいです。

A4用紙は長いほうの辺が
F3号キャンバスより3㎝くらい長いので,
バランスを見るとき
そこだけ気をつけてください。

 

 

 

構図用の写真をプリントするには
いくつかやり方がありますが,

 

A.パソコンを使う人

写真をWordに貼り付け,
描く大きさにしてプリントアウトする

という方法が簡単です。

 

B.パソコンを使わない人

写真屋さんなどでプリントした写真を
拡大コピーする

という方法があります。

 

ここでは,この2通りの方法を紹介します。

 

 

まずパソコンを使う方向けのAの方法です。

① 写真をパソコンのWordに貼り付けます。

WordのA4サイズに,使う写真を貼り付ける

② 写真のいらない部分をトリミングします。

③ 主役が描きたい大きさになるよう拡大。

 

上の写真を拡大しました。タテヨコの比率が変わってはいけないので,角にカーソルを当てて拡大しましょう。

④ 構図のバランスを考えて写真を移動。

⑤ プリンターでプリントアウトします。

A4の長いほう3㎝はF3キャンバスより大きいので,折ってあります。

Wordの画面上で写真を動かして,
このように,だいたいの構図を
決めてしまうところまでできます。

 

 

 

次は,パソコンを使わない方向けの
Bの方法です。

① 写真屋さんなどで
 写真を大きくプリントする

できればA4に。少なくとも2L以上)

 

② コンビニなどのコピー機で拡大コピー
(倍率の計算方法は後で説明します)

という感じです。

 

①で写真を大きくする方がいい理由は,
小さい写真を拡大コピーすると
細部がぼやけて見えにくくなるからです。

 

どうせ色をつけるときに
発色のいい写真が必要になります。

 

このときにも写真が小さいと
細かいところが見えなくて
とても難しいです。

 

だから,私は彩色するときにはいつも,
描く絵とほぼ同じ大きさのカラー写真を
準備しています。

 

 

 

亡くなったペットさんの絵を描こうと
思われている方で,
小さい写真しか残っていない場合は,

できるだけ性能のいいコピー機で
できれば写真用紙などに高画質で
拡大コピーしてみてください。

 

ご自分では難しい場合は,
お近くの写真屋さんに相談すれば
やってもらえるかもしれません。

 

 

 

では,②の拡大コピーの計算
やってみましょう。

 

コンビニ等に行ってコピーする場合,
何度もやり直すと時間もお金もかかるので,
何倍に拡大するのか,しっかり
計算してからコピーしに行きましょうね。

 

選んだ写真とキャンバス(用紙)を見て,
どこにどのくらいの大きさで
ペットさんを描きたいか決めます。

 

まず,写真のペットさんの
端から端までの長さを測ります。

しっぽの先から前足の先まで,15.2㎝でした。

この15.2㎝を,Aとします。

 

次に,

キャンバスのどの辺りに描くか決め,
その両端に小さく印をつけます。

しっぽの先がこの辺り。小さく印をつけます。
前足の先がこの辺り。こちらにも印をつけます。

その印から印までの長さを測ります。

印から印までの長さは29.5㎝でした。

その29.5㎝をBとします。

 

B÷Aが倍率になります。

 

29.5÷15.2=1.940…

となり,1.94倍でコピーすれば
いいことになります。

 

私の経験上,計算した倍率で拡大すると,
実際にキャンバスに置いてみると
想像したより小さいことが多かったです。

 

少し大きめの2.0倍くらいで
コピーしておくほうがいいかもしれません。

 

 

コピー機の細かい数値の設定が
分からない場合は,
店員さんに訊いてみるといいでしょう。

 

お店がすいている時間じゃないと
聞きにくいので,
コピー機の扱いがわからない場合は,
お昼などの混む時間は避けて
行ってみてくださいね。

 

 

計算が出てくると,めんどくさいですね。

でも,構図を考えるときには
計算は必ず必要になります。

 

細かい! と思われたかもしれませんが,
構図には妥協しないでほしいので,
目分量で「大体2倍かなー」
みたいなことはしないでください。

 

これからせっかく
愛情一杯の絵を描くのですから,
構図の段階で失敗するのは避けましょう。

 

 

3.写真の必要なところを切り取る

 

ここからは,背景を写真と変える方だけが
必要な作業になります。

 

プリントした用紙から,
ペットさんだけ残して
周りを切っていきます。

 

毛がふわふわしていると
輪郭がはっきりしないかもしれませんが,
できるだけペットさんの輪郭に沿って
切ってください。

 

余計な色や線が残っていると,
構図を考えるときそれに惑わされて
バランスが悪くなってしまいます。

 

 

4.切り取った写真を
キャンバスと同じ大きさの紙の上に
置いて位置を決める

 

キャンバスと同じ大きさの紙を準備します。
これもコピー用紙など,薄い紙で大丈夫です。

 

F3号の場合であれば,A4のコピー用紙の
長いほうを3㎝折ってください。

 

これでちょうど,
額に入ったときに隠れる部分を除いた
F3号キャンバスの大きさになります。

 

では,その紙の上に
3.で切り取ったペットさんの写真を
置いてみましょう。


 

どこに置くとバランスがいいでしょう。

 

① 構図の大切さと構図を考えるコツ
でお話しした

1.余白の面積に気を配る
2.下に余裕を持たせる
3.顔が向いている方に空間を作る
4.主役をど真ん中から少し外す
5.額縁に入ると端が5㎜くらい切れる

 

も思い出しながら,ちょっとずつずらして
一番しっくりくる場所を探してください。

 

コピー用紙は薄くて
クルクル巻いてしまいますね。

 

端っこの数か所に,貼ってはがせる糊とか
ほんの小さなセロテープを貼って,
形がわかるようにしてやってみてください。

 

テープはあまり大きく貼ると
移動させるとき紙が破れてしまうので,
できるだけ小さくしてください。
私は両面テープのようにくるっと巻いて
写真の裏側に貼って使っています。

 

これなら,ちょっとずらそうと思ったら
簡単に剥がれます

セロテープをくるりと巻いて,両面テープのようにして貼り付けます。

ここだ!と思う場所が決まったら,
動かないようにしっかり貼りましょう。

 

 

主役のペットさんの位置が決まったら,
次に,背景をどうするか決めましょう。

 

切り取った写真を貼った紙の余白に
アイデアスケッチしてみましょう。

 

この紙にそのまま描きこんでも構いませんが
描き直したいとき消しゴムがかけにくい。

 

なので

この紙をコピーして
アイデアスケッチすると便利がいいですよ。

 

何通りか考えてみたいときは
何枚でもコピーして使えます。

 

背景に風景などを入れる場合は,
想像では描きにくいので,
参考になる写真などを見て描きましょう。

 

「花を入れたい」

なんていう場合は,

花の写真を撮って,
ペットさんの写真でやったように
使いたい大きさにプリントして切り取り,
その紙の上に配置してみるといいですね。

このウサギさんはバナナが好きなので,バナナを入れてほしいと飼い主さんから要望がありました。

どんな背景の中にいると
ペットさんが幸せそうに見えるか,
考えると楽しいですね。

 

 

④ 転写の方法

 

構図が決まったら,
いよいよキャンバス(紙)に向かいます。

 

ここでは,私がいつもやっている転写方法を
ご紹介します。

 

先ほど構図を決めた用紙と
2Bの鉛筆,赤いボールペンを使う方法です。

 

1.構図を決めた紙を白黒コピーする

2.裏に2Bの鉛筆で濃いめに色を塗る

3.キャンバスの正しい位置に置き,
  赤いボールペンでなぞる

 

という手順で進めます。

 

 

「え? こんな方法で転写?

自分で見て描くのが楽しみなんじゃない?」

 

という方もいらっしゃると思います。
そういう方は,写真を見ながら
描くことを楽しんでください。

 

私も以前はそう思っていました。

 

ですが,
1枚の絵を仕上げるのにかかる時間は
とんでもなく長く,忙しい生活の中で
時間をひねり出して絵を描いていた私は,

「形を写すことより
絵の具で質感を出したりすることに
時間を使ったほうがいい。
省ける時間は節約しよう。」

と思うようになりました。

 

なので,今はコピーできる大きさの絵は
転写して先に進んでいます。

 

 

写実的に人物など描かれる画家さんも,
大作を実物投影機で転写されていると
聞いたことがありますし,

使える道具で時間を短縮することは
別に手抜きでも何でもありません。

 

転写をしたとしても,
絵が仕上がるまでには大変な時間がかかり,
愛情はたっぷり込められるのですから。

 

 

楽しみながら写真を見て描くよー!
という方も,

大まかな輪郭だけは
この方法で転写することを
お勧めします。

 

人間の目は錯覚を起こしやすいのです。

 

しっかり見て描いても必ず狂いが生じます。

 

主役の位置や大きさなど,
せっかく時間をかけて練った構図が
狂ってしまうのはもったいないです。

 

特に,小さい写真を見て大きく描く場合,
主役が小さくなってしまいやすく
最初に考えた構図より
さびしくなってしまうことが多いのです。

 

輪郭だけは正しい位置に転写して,
細かいところをしっかり写真と
見つめあいながら描いていってください。

 

では,転写の方法に進んでいきましょう。

 

 

1.写真を白黒コピーする

なぜここで白黒コピーするのか?

 

いろんな色があると,
どこをなぞったのか分かりにくいからです。

 

だから,写真は白黒にして,
なぞるのは赤のボールペンにします。

 

 

写真を貼り付けたカラーの紙は,
白黒ではわかりにくい細部を確認するため,
横に置いて見ながら転写作業をします。

 

このカラーと白黒2枚の紙は,
転写が終わっても捨てず,
絵が仕上がるまでとっておいてください。

あとでまた使う場合があります。

 

 

今回,黒いウサギさんをコピーすると
垂れ耳と体の境目などの
線が見えにくくなってしまいました。

 

プリントするときに
コントラストを強くするとか,
薄く印刷するとか,

できる方は自分の写真に合わせて
見えやすいように調整してみてください。

 

ウサギさんが黒いこともあり,
見本の写真が見えにくくてすみません。

 

 

2.裏に2Bの鉛筆で濃いめに色を塗る

 

2Bくらいの柔らかい鉛筆で,
コピーの裏側を塗っていきます。

輪郭だけ写す方は,
輪郭線のところだけ塗っていくといいです。

 

ピッタリ輪郭線のところまでしか
塗っていないと,
なぞるのがちょっとズレただけでも
写らないので,
輪郭の1㎝くらい外まで塗っておきましょう。

 

塗り終わったら,光にかざして,
鉛筆が転写するもの全部をカバーしているか
確認しましょう。

光に透かして,転写する部分の裏が全部塗れているか確認。

足りないところが見つかったら塗り足します。

 

 

3.キャンバスの正しい位置に置き,
  赤いボールペンでなぞる

 

ここで,折っている3㎝が邪魔になるので
切りました。

 

キャンバスの真ん中にコピーを置くと,
端が5㎜くらいずつ空きますね。

そこは額縁で隠れるので気にしなくて大丈夫。

 

コピーの上を2か所,テープで固定します

上を2か所セロテープで固定。

赤のボールペンで輪郭からなぞっていきます。

 

別に黒のボールペンでもシャーペンでも
構わないのですが,

先ほどもお話ししたように,

どこをなぞってどこが終わってないのかが
わかりにくいので,目立つ赤にしています。

 

時々めくって,写っているか確認します。

見えにくいところや
どうなっているかわからないところは,
鮮明な写真を見て確認しながら進めます。

 

特に毛がふわふわしているところは
背景の線が透けて見えて間違えやすいので
カラーの写真をよく見ましょう。

 

薄くてほとんど見えない場合は,
一度テープを外して,
裏の鉛筆をもう少し濃く塗ってみましょう。

 

ボールペンの筆圧をちょっと強めに
してみてもいいですが,
キャンバスは布なので,押さえすぎて
伸びてしまわないように気をつけてください。

 

 

輪郭線,目・鼻・口はもちろん,
明るいところと影の色が
はっきり分かれているところなど
形が見える部分は全部なぞっておきましょう。
カワイイおひげも忘れずに。

全部写し終わったら,
描き落としや写し間違いがないか
カラー写真と見比べてチェック!

修正があるかもしれないから,
まだテープは外さないでね。

黒いウサギさんだからわかりにくいけど,キャンバスの隣はカラー写真です。描き忘れがないか,しっかりチェックしましょう。

 

描き落としや間違いの修正をして,
薄くて見えにくいところがあれば,
写真を見ながら鉛筆で描き足しましょう。

 

描き足すの時の鉛筆は,
2Bではなく,
HBなど少し薄い鉛筆のほうがいいです。

 

2Bであんまりくっきり描いてしまうと,
絵の具をつけるとき溶けだして
色を濁らせてしまうのです。

 

全部を濃くなぞりたくなる人も
いるかもしれませんが,
見えにくいところを補助的になぞるだけに
しておきましょう。

 

これで転写完了です!

 

なのですが…

転写に使った白黒コピー,
まだ捨てないでください!

 

彩色の初めに下塗りをするのですが,
筆で何度もなでると
鉛筆の線が消えることがあります。

 

また,色を重ねているうちに,
細かい部分やおヒゲなどが
見えなくなることも。

 

そんな時また必要になることがあるので,
絵が仕上がるまでとっておきましょう。

 

線が消えるのが不安な方は,
先に下塗りをしてから
転写するほうがいいかもしれません。

 

下塗りの方法については

第5回 アクリル絵の具で彩色をする
https://d-marron.com/lesson5
で解お話ししています

 

 

輪郭だけ転写した方は,
ここから細かい部分を
描き込んでいきましょう。

 

2Bではなく,HBなど少し薄めの鉛筆で,
あまり押さえないでそっと描いてください。

濃い鉛筆は,絵具をつけるとき溶け出して
色が濁る原因になります。

 

そして,できるだけ
消しゴムを使わないようにしてください。

 

キャンバスに鉛筆で描いて
消しゴムをかけると,黒く汚れたり,
消しゴムのカスがキャンバスの目に残ったり
することがあります。

 

そして,キャンバスは布なので,
消しゴムで押さえることで
たるみができこともあります。

キャンバスには
あまり無駄に力をかけないほうがいいのです。

 

描き込むときオススメなのは
鉛筆よりも

水彩色鉛筆」です。

 

水彩色鉛筆は,
普通の色鉛筆のように色をつけ,
あとで水をつけた筆でなぞると
絵の具のように溶け出す鉛筆です。

 

安価で使いやすいので,
私はこの水彩色鉛筆を使用しています。↓

https://www.staedtler.jp/products/graphic/noris.html

 

これで下描きすると,
失敗したとき水をつけた布などで
ふき取って消すことができます。

 

これなら消しゴムを使わなくても
下描きができます。

 

彩色のとき絵の具に混じっても,
同系色なら濁りも少ないです。

 

茶色のワンちゃんなら
茶色の水彩色鉛筆で下描きし,

白いネコちゃんなら
背景に使う予定の色で輪郭を描き,
目や口などはそれぞれに近い色で
描くようにするといいですね。

 

 

ただ,先ほども言ったように,
水でぬらすと溶ける鉛筆です。

 

下描きをしてから下塗りをすると,
せっかく描いた下描きが消えてしまうので

要注意!

 

水彩色鉛筆を使う場合は,
下描きをする前に
下塗りを先にしておきましょう。

 

 

なぜ下塗りをするのかについては,
第5回 アクリル絵の具で彩色をする

https://d-marron.com/lesson5

でお話ししています。

 

 

転写の時,

鉛筆で裏を塗るのって手間がかかるから,
カーボン紙使っちゃダメなの?
と思われた方

 

私もやってみたことがあるのですが…

 

ズレても消しゴムで消えず,

濃すぎて,絵の具を乗せても
カーボンの線が透けて見えました。

 

仕上がったとき
カーボンの色が見えているのは残念過ぎます。

やめておいたほうがいいでしょう。

 

 

まとめ

 

今回は

① 構図の大切さと構図を考えるコツ

② 初心者にはF3号キャンバスがおススメ

③ 写真を選んで構図を決める

④ 転写の方法

をお話をしました。

 

転写をするところまで進んだ方は
キャンバスにカワイイわが子の姿が
見えてきたことと思います。

 

いよいよ色をつけていきます。
ワクワクしますね。

 

早く色をつけたくて
うずうずしているかもしれませんが…

 

第4回では
アクリル絵の具を初めて使う方のために,

アクリル絵の具の特徴と選び方

をお話しし,
第5回で実際に色をつけていく
という流れになります。

 

アクリル絵の具にも
いろんな会社が販売しているものがあり,
「アクリルガッシュ」という
ポスターなどを描く時に適した
まぎらわしいものもあります。

 

間違ってこれを使うと,
ひび割れを起こすこともあるので要注意です。

 

「100円ショップにも売ってるけど,
あれでいいの?」

なんて迷ってる方もいらっしゃるでしょう。

 

次回の講座で詳しくお話ししますが,
長く大切にしたい絵には
使わないほうがいいです。

 

まず,アクリル絵の具がどんな絵の具なのか
お勧めのアクリル絵の具はどれなのか。

 

また,絵の具以外に
どんな道具を揃えればいいのか。

 

第4回の講座でそれらの疑問を解決してから
色をつけていきましょう。

 

まだ絵の具を買ってない方はもちろん,
もう買っちゃったよーという方も,

色をつける前に一度目を通してほしい
内容になっています。

 

今回は使い慣れた絵の具で彩色する

という方にも,第4回・第5回の中に
何か参考になることがあるかもしれないので
もしよかったら目を通してみてください。

 

では,
「第4回 アクリル絵の具の特徴と選び方」

で,またお会いしましょう。