アクリル絵の具で透明なものを描く方法 乾くと耐水性になる性質を利用

 

 

 

 

 

透明なものって,
どうやって”塗る”のですか?

 

透明な浮き輪ばかりを描いていた頃,
私がよく受けていた質問です。

 

透明な物の向こうに見える色を先に置いて

乾いてから透明なビニールの色を

上に薄くかけるといいですよ。

 

いつもそんな感じで答えていたと思います。

 

でも,質問された方は,
ポカンとされていることが
多かった気がします。

 

私が ”色を置く” という表現をした
ことに戸惑われていたのかもしれません。

 

まず,”色を塗る” という感覚が
理解の邪魔をしているように感じました。

 

私の感覚では,

見えるところに見える色を
置いていっているうちに
絵が仕上がっていく

のです。

 

”この物体をどんな色で塗ってやろうか”

と考えることは,あまりないです。

 

 

今回は,

色を ”塗る” のではなく

 ”置く” ということを意識しながら,
 

乾くと耐水性になる
アクリル絵の具の性質を利用して

透明な物を描くコツ
お話しします。

 

 

透明なグラスを描く

 

この透明なグラスを描くとします。

 

グラスの向こうには
何が見えているでしょうか

 

この写真では,
テーブルが写っていますね。

 

このように,透明な物の向こうには,
景色や部屋の様子が見えるはずです。

 

色をつけるときには,
まずはその様子を先に描きます。

グラスの存在は無視してしまうわけです。

 

ですが,

透明な物がある部分だけは光の屈折で
向こうにある物がゆがんで見えますね?

 

そこは見えるまま,
ゆがんだ状態を描きます。

向こうにある物が何だかわからなくても
構いません。

見えた通りに描けばよいです。

 

そうすれば,自ずと

目の前にあるグラスの形が見えてきます。

 

コップには,光が当たったところに
反射があったり,

分厚いところが黒っぽく見えたりしますね。

 

そういう場所には
やはり見える色を置いていきましょう。

 

暗い部分は
先に置いても後に置いても構いません。

 

反射の白は汚したくないので,
最後に置くのがいいでしょう。

 

ただ,にじませる目的の時以外は,
完全に乾いてから重ねるようにします。

生乾きで次の色を重ねようとすると,
下に塗った色が剥がれて
穴が空いたようになってしまいます。

 

ドライヤーを使うなどして
必ずカラッと乾かしてから重ねて下さい。

 

”このくらい乾いていれば大丈夫かな?”

という,シットリした状態の時が,
一番失敗しやすいので要注意です!

 

光や暗い色をにじませたい場合は,
敢えて濡れているときに色を置きます。

この時,
決して筆で撫でてはいけません。

 

塗れた状態の絵の具に溶け込ませるように

チョコンと置くのです。

 

そうすれば,水が絵の具を運んでくれて,
境目がぼやけます。

 

強い光を入れたいときは水が少ない白を

柔らかい光を入れたいときは水を多めに

 

この水の量の加減は経験です。

何度かやってみて,
自分の思う状態になる水の量を
探してみましょう。

 

 

透明な物に色がついている場合の描き方

 

この浮き輪の絵の場合,

パンパンに空気が入って,
先ほどのグラスとはまた違った感じですね。

 

ビニールの浮き輪自体にも
薄い青色がついています。

 

これも先に向こうの風景に色を置いて
後からビニールの水色を薄くかけました。

 

このビニールは,色を置くというより,
筆を素早く走らせたという表現が
近いかもしれません。

 

ゆっくり筆を動かしたのでは,
ピンと張ったビニールの質感が出ません。

 

浮き輪の色を水で薄めて筆につけ,
浮き輪の形に添って勢いよく動かしました。

 

全体に均等には色を置きませんでした。

 

完全に乾かしてから,
色が濃いところには2度,
もっと濃いところには3度というように,
何度か水分を多めに溶いた色を重ねました。

 

もちろん重ねるたびに,

完全に乾燥させてから次を重ねます。

 

薄い透明感のある色なので,
重ねた回数による
極端な色の変化もありません。

自然なグラデーションに仕上がります。

 

完全に乾かしさえすれば,

納得いく透明感になるまで

何度でも重ねることができます。

 

 

このように,

透明な物に色がついている場合は

 

透明な物がない状態の
後ろの光景の色を先に置き,

完全に乾いてから

透明な物の色をかけましょう。

 

透明な物の色が被って
後ろの物がどんな色かわからないときは
今見えている色を作って置くといいでしょう。

その後,透明な物についている色を
上に薄くかけましょう。

 

 

実は 水ではなく メジウムを使っています

”透明な色にするには水分を多く”

と描きましたが,
私は水ではなく,メジウムを使っています。

 

メジウムというのは,絵の具に加えて
いろいろな効果を出す液体です。

 

今まで描いたアクリル画のほとんどすべてが
ホルベインのアクリル絵の具なので,
メジウムもホルベインしか使っていません。

 

アクリル絵の具やアクリル系のメジウムは,
他社のものを混ぜたり重ねたりすると
剥離したりする場合があるのです。

 

なので,アクリル絵の具を使用するなら

メーカーを統一することをお勧めします。

 

ツヤを出したい,ツヤを消したい,
透明感を出したいなど,

用途によってさまざまなものがありますが,

 

私が普段使っているのは

ホルベインのペインチングソルベントです。

 

これは感触が水のようにサラサラで,
水で溶くことに慣れている人にも
抵抗なく使うことができます。

 

水のように無色透明。

匂いも気になりません。

 

水よりも乾燥が遅くなり,
乾くと水より少しツヤが出る気がします。

 

絵の具の定着もよくなるので,
私はいつもこれを使って描いています。

 

初心者がメジウムを試してみるなら,

まずはこれがオススメです。

 

まとめ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明ばかりで,写真も動画もない
わかりにくい記事になってしまいました。
申し訳ありません。

これから少しずつ
動画など加えていこうと思います。

 

 

上の絵は,私の

『うみかぜ』という作品。

私は時々,人間まで半透明にしてしまいます。

 

 

とにかく,透明な物を描く時は

向こうに見えるものの色を先に置き,
その上に透明な物の色を置く

というのがコツです。

 

乾くと耐水性になるアクリル絵の具では
簡単にこういうことができます。

 

ただし!

下の色が完全に乾いてから
色を重ねるというルールを
必ず守ってください。

 

生乾きで重ねると
下の色がとれてしまいますから。

急ぐ場合はドライヤーでカラッと乾かして
次の色を置いていきましょう。

 

是非やってみてくださいね。

 

こちらの作品も半透明な人物です。↓

https://d-marron.com/20gmuseam

https://www.20gmuseum.jp/museum/Room3/