初心者も描けるペットの肖像画講座 第4回 アクリル絵の具特徴と選び方

 

こんにちは,麻真です。

 

第3回の講座では,

ペットの魅力を生かす構図の作り方
キャンバスに転写をするまでの方法について
お話しさせていただきました。

 

下描きができたら
いよいよ色を付ける段階ですね。

 

でも,

初めてアクリル絵の具を使う方は
アクリル絵の具がどういう性質のものなのか
わからないと不安ですよね?

 

絵の具だけでなく,
筆やパレットなど,ほかの道具も必要です。

 

どこでどんなものを買えばいいのか
さっぱりわからない

 

そういう方のために,第4回は

アクリル絵の具の特徴と選び方,
どんな道具をそろえればいいのか

などについてお話しします。

 

これを知ってから描き始めれば,
途中で足りないものを買いに走ったり,
予期せぬ失敗をしなくてすむと思うので,
色をつける前に是非ご一読ください。

 

① アクリル絵の具の特徴と魅力

② オススメのアクリル絵の具

③ 肖像画に向かないアクリル絵の具

④ メジウムって何?

⑤ アクリル絵の具で起こる不具合

⑥ どんな筆や道具を準備すればいい?
  柔らかい布も必需品!

 

という内容で進めていきますね。

 

では始めていきましょう!

 

① アクリル絵の具の特徴と魅力

 

アクリル絵の具は

紙に水彩絵の具のようなタッチで
描くこともできるし,

油絵の具に近い厚塗りを
することもできる便利な絵の具です。

 

 

水彩絵の具と同じように
水で溶かして使います。

 

水彩絵の具と違う点は,

一度乾くと耐水性になり,
水拭きしても取れなくなるところです。

 

この特徴のおかげで,
重ね塗りが簡単にできます。

 

水彩絵の具のように,
重ねたとき下の絵の具が溶け出して濁る
ということがないからです。

 

 

油絵の具は乾燥にかなり時間がかかりますが
水で溶いたアクリル絵の具は
水彩絵の具と同じくらいの時間で乾きます。

そのため,早く重ね塗りができ,
制作の期間を短縮できます。

 

私は,
大学時代は教育学部美術科で油絵を学び,
社会人になって水彩画教室の講師を経て
アクリル絵の具にたどり着きました。

 

油絵の具も水彩絵の具も
使っていたわけですが,
一度アクリル絵の具を使ったら,
その便利さ,使いやすさで
他の絵の具は使わなくなってしまいました。

 

ちなみに,彩色が一番難しかったのは
透明水彩絵の具で,

片付けが一番めんどくさかったのは
油絵の具です。

 

 

アクリル絵の具は,
その両方のしんどさをなくしてくれました。

 

 

アクリル絵の具を使う前が
透明水彩絵の具だったので,

私のアクリル絵の具の使い方は
水彩絵の具風です。

 

 

 

アクリル絵の具は
アクリル樹脂を固着材にしている絵の具です。

 

乾くとビニールのようになるので,
手について固まると
石鹸で洗ってもなかなか取れず,
水でふやけるとパックのようにはがれます。

 

素材の似たものにはよく定着し,,
プラスチックのパレットを使うと
乾くと洗っても取れなくなります。

 

紙はもちろん,木や布,石など
様々なものによく付き,
乾くと少々水に濡れても大丈夫なので,
とても便利です。

 

そんなアクリル絵の具でも
定着しないものがあります。

 

油絵の具の上(油絵専用キャンバスも×)
ツルツルの金属
ツルツルの陶器・ガラス
などです。

 

金属やガラスなどは,
ツルツルな面をザラザラに加工すれば
アクリル絵の具が付くようになるみたいです。

 

油絵専用キャンバスには定着しにくいので
キャンバスを使うときは

油絵・アクリル兼用キャンバス

を使用しましょう。

 

油絵の具を塗った上に
アクリル絵の具は付きません。

逆に,アクリル絵の具の上に油絵の具は
付くそうです。

私はやってみたことはないのですが。

 

 

アクリル絵の具の一番の魅力は
他の絵の具に比べ,
経年変化が少ないことでしょう。

 

油絵などに起こるひび割れもありません。
(後で出てくる「アクリルガッシュ」
という絵の具は,ひび割れるので注意)

 

あと,よくあるのが,
日光が当たることによる退色ですが,
これもほとんどないとされています。

 

私は絶対に
直射日光が当たるところに
作品を置いたりしないので,
アクリル絵の具が
日光によって変色しないことを
自分で実感はしていません。

 

実際はどうなでしょう。

 

ホルベインの絵の具のカタログには,
透明性などの表示とともに
耐光性を示す記号がついています。

 

これが4段階中2の色も結構あるので,
全く変化しないということはないと思います。

 

アクリル絵の具の作品だから,
どれだけ日が当たってもダイジョブ
…ではないということでしょう。

 

特にルミナス(蛍光色)の絵の具については
耐光性に印がありません。

長期間大切にしたい作品には
使わないほうがいいと思います。

 

こういう特殊な色は
普通の肖像画や風景画などを描くだけなら
使用することはないので,
買わないほうがいいでしょう。

私は何色か持っていますが,
間違ってパレットに出してしまって

あ~ぁ…

なんてこともあったので。

 

 

どちらにしても,
どんな絵の具で描いた絵にも,
日光はよくないに決まっています。

陽が当たらないところに飾るのが
作品に対する愛情ですね。

 

最近,
数種類のアクリル絵の具で
日光による変色の実験を
始めました。↓

https://d-marron.com/taikousei

 

10年後,20年後まで
日の当たる場所に置いてみて,
結果をお知らせますね。

気の長い話ですが。(笑)

 

 

② オススメのアクリル絵の具

 

油絵具や水彩絵の具と同様に,
アクリル絵の具もたくさんのメーカーが
生産,販売しています。

 

次の章で詳しくお話ししますが,
同じメーカーのものでも

「アクリガッシュ」

という用途の違う紛らわしいものもあるので
間違えないように選んでほしいと思います。

 

 

アクリル絵の具をこれから購入するなら,
リキテックスホルベインという
メーカーのものをお勧めします。

 

ちなみに,私はずっとホルベインを
使用してきました。

 

アクリル画を始める時に,
水彩教室に出入りされていた業者さんが
ホルベインを扱われていたので,
アクリル絵の具とその他のすべてのものを
ホルベインでそろえました。

 

20年以上使用していますが,
最初の頃に描いた絵も変わらない状態で
いるので,変色や退色などは
ほとんどないと言っていいと思います。

 

先ほど言ったように,私は絶対に
作品を陽に当てないので,
毎日陽が当たる場所に飾った場合は
保障できませんが。

 

 

ホルベインのアクリル絵の具は色数も多くて
私の得意な透明なものを描いたりするのも
問題なくできています。

 

使いやすい,いい絵の具だと思います。

 

通販を利用しなかった頃は,
私が関わりのある画材屋さんがみな
ホルベインしか扱ってないので,
ホルベインしか手に入りませんでした。

 

画材屋さんがそのメーカーのみ
置かれているというのも,
信頼できる理由の一つです。

 

 

もう一社,リキテックスをお勧めする理由は

私の信頼する画家の先生方が,
口をそろえてリキテックスは発色がよいと
言われているからです。

 

実をいうと,私は最近までリキテックスを
使ったことがありませんでした。

 

発色がいいと聞けば,もちろん試してみたい。

 

でも,他社を使うとなると,
またすべて買い揃えないといけなくなり,
お金がかかるので踏み出せずにいたのです。

 

 

でも,この記事を描くにあたって,
使ったこともないものを人に勧めるなんて
無責任だと思い,
思い切って買ってみました!

 

リキテックスの中でも,
特に発色がよいという

「リキテックスプライム」という絵の具。

 

最初は12色セットくらいがあればいいかと
30mlのセットと

セットの中になくて,
私がよく使いそうな5色を
バラで買い足しました。

ホルベインは,販売されている113色のうち
100色くらいを揃えていますが,
全く使わない色もあります。

この17色で試してみて,ずっと使いそうなら
色数を増やしていこうと思います。

 

 

私は20年以上アクリル画を描いているので,
私が絵を描くにあたって使いそうな
メジウムなども,通販で注文しました。

 

これらはどういうものか

④メジウムって何?で説明しますが,
使わない人もいるモノなので,
今は買わなくていいです。

 

何枚か描いてみて,
あったらいいなと思われたら
その時に買い足しましょう。

 

 

ちなみに絵の具も通販での購入です。

 

 

都会に住んでいる方は
大きな画材店に行くと手に入ると思いますが
私のように郡部に住んでいる者は,
たくさんの種類から選んで買おうと思うと
通販になりますね。

 

田舎に住んでいて,近くにお店がないから
通販をフル活用するようになったのですが,
逆にお店まで足を運ばなくても
何でも手に入るようになって,
便利になりました。

 

今では画材だけでなく,
食品と衣料品以外はほとんど通販です。

 

まだ通販なんて使ったことがないという方も
これを機会に利用してみると
生活が変わると思いますよ。

私は,ポイントが貯まりやすいので
楽天を主に利用しています。

 

 

話がそれましたが,
リキテックスプライムを使ってみました。

 

聞いていた通り,発色がよく

使いやすい絵の具です。

 

自信を持ってお勧めします。

 

 

③ 肖像画に向かないアクリル絵の具

 

「アクリル」と名前がついていても,
使わないほうがいい絵の具があります。

先ほどから何度か名前が出ている

アクリルガッシュ

という絵の具です。

 

これはポスターやデザインに適した絵の具で
風景や肖像画などの絵画には向いていません。

 

学校で生徒に使わせますが,
色によっては厚塗りするとひび割れます。

 

耐光性もアクリル絵の具よりは
落ちるようです。

 

アクリル絵の具とアクリルガッシュは別物。
間違って購入しないようにしてください。

 

 

100円ショップのアクリル絵の具も
耐光性がよくないらしいです。

 

陽に当たると色が薄くなっていきます。

 

長期保存には向かないので,
長く大切にしたい絵を描くときには
使わないほうがいいようです。

 

やはり,値段が違うというのは
それだけの理由があるということですね。

 

 

④ メジウムって何?

絵の具の後ろに写っている大小の容器。

この中に入っているのが
メジウムというものです。

 

メジウムとは

アクリル絵の具に混ぜたり,
下塗りや仕上げに使ったりする液体です。

ジェル状のものもあります。

 

 

メジウムは種類によって,

・光沢を出す,または光沢をなくす
・乾燥速度を変える
・紙などを貼り付ける
・下地の質感を作る

などの役割をします。

 

水で溶かすより
固着力が増すものが多いようです。

 

様々な用途のものがあり,
メーカーによっても多少違いがあります。

 

アクリル絵具は水で溶かして使えるので,
最初はメジウムを使わなくても
いいと思います。

 

「でも,どれか使ってみたい」

と思われるなら

 

私は,ホルベインの絵の具を使うとき,
水の代わりに

「ペインチングソルベント」

というメジウムで溶かしています。

 

無色,無臭で
水のようにサラサラしているので,
混ぜる感覚は水とほとんど変わりません。

 

効果は,

混ぜるときの泡立ちを減らす,
タレやハジキの軽減,
乾燥を少し遅らせるなどです。

 

200㎖で500円くらいなので,
もし使ってみるなら
最初はこれがオススメです。

 

リキテックスでは,

「ペインティングメディウム」

というものがあります。

 

これは,先ほどのホルベインの
ペインチングソルベントに比べると
少しネバく,乳白色です。

 

アクリル絵の具に慣れてきて,

「ちょっとツヤを出したいな」

など感じるようになってきたら
自分の望む効果を持つメジウムを
買い足していけばいいでしょう。

 

使ってみないとどんな感じかわからないので
最初は試しに量の少ないものを買ったほうが
いいと思います。

 

長期間使わないでいると
固まったりして使えなくなることもあるので
買ったら早めに使いましょう。

 

 

リキテックスは
少量のメジウムの6種類セットを
2500円くらいで販売しています。

 

興味がある方はこれを買って,
いろいろ試してみてもいいと思います。

 

でもコレ,初めて絵を描く時に
使えるものは入ってない気がします。

いきなり大切な絵に使って
失敗してはいけないので,
まずは厚紙などに試し塗りをして
どんなものか知るところから始めましょう。

 

 

使えば便利そうなメジウムですが,
ここで気をつけて欲しいことがあります。

 

メジウムを買うときは,
必ず絵の具と同じメーカーのものを
買うようにしてください。

 

理由については次の章で詳しくお話しします。

 

 

⑤ アクリル絵の具で起こる不具合

 

 

アクリル絵の具を使い始めて
20年以上経ちますが,
それほど不具合が起きたことはありません。

 

ですが,ほんの数回だけ
とんでもないことが起こったことがあります。

 

どの不具合も,
絵の具に欠点があったわけではありません。
使い方を間違えたために起きた悲劇です。

 

できれば私と同じ失敗をしてほしくないので
私が体験した3点だけお話しておきます。

 

 

★1つ目の不具合

 

勤めていた学校で,生徒が

「黒の絵の具が足りなくなった」

というので,卒業生が残していった
黒の絵の具を渡しました。

 

その生徒は,色ムラができていた黒の部分に
私が渡した絵の具を水でとき,
重ね塗りをしました。

 

しばらくすると,その生徒から悲鳴が。

 

重ね塗りをした黒の部分が,
乾いた所からペリペリ剥がれて行くのです。
最後には,残らず全部取れてしまいました。

 

渡した絵の具を見ると,
それはその生徒が使っているのとは
違う会社のものでした。

 

それが原因だったとすぐに気づき,
その生徒と同じ会社の絵の具を探して
もう一度塗り直しさせました。

 

この出来事で,

その頃お世話になっていた先生が
こんな話をされていたことを思い出しました。

 

 

展覧会に絵を送る前夜,

絵の具とは違う会社の仕上げメジウムを塗り
安心して寝ようとしていたら,

乾燥したメジウムが
ペリペリ音を立てて剥げ落ちた。

時間がないから,とても焦ってやり直した。

 

「だから,他社のものを混ぜたり重ねたり
絶対にしてはいけないよ。

と。

 

 

他社のものを重ねると,
必ずそうなるというわけではありません。

 

だけど,相性が悪い成分を使ってある場合は
実際そんなことが起こるのです。

 

他の方のホームページを見ると
あまり気にせず混ぜて紹介してあるので,
それほど不具合は起こらないのかも
しれませんが,

やはり私は,絵具と違う会社のメジウムを
混ぜることはお勧めしません。

 

wikipediaのアクリル絵具のところにも

メーカーやブランドの異なる製品の併用に
難がある

とありますね。↓

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E7%B5%B5%E5%85%B7

 

今回買った
胡粉ジェッソのラベルにも

「他銘柄のアクリル絵の具や油絵の具,
テレピン油などと混ぜて使用しないで
ください」

と書いてありました。

 

やはり,他社のものと混ぜると不具合が
起こる可能性があるということでしょう。

 

絵の具がホルベインなら
ホルベインのメジウム,

絵の具がリキテックスなら
リキテックスのメジウム

を使用することをお勧めします。

 

同じ会社の絵の具同士では
こんなことは絶対起こりませんから。

 

 

 

たとえその時大丈夫だったとしても,
年数がたって変色やひび割れを
起こす可能性もあります。

 

ずっと大切にしたい絵で
あえて危険なことをしたくはないので,
私は絶対,他社の絵の具や溶剤を
混ぜたり重ねたりしていません。

 

生徒さんにも,
「いろんな会社の絵の具を買わないで,
ひとつのメーカーでそろえてね。」
と言っています。

 

 

私は20年以上ホルベインを使っていて,
ほとんど全色を揃えています。

 

色の特徴とかもわかっていて使いやすいし,
これはこれでずっと使っていくと思います。

 

今回リキテックスの絵の具を買ったことで
今後は2社の絵の具が家に同居するので,

間違えて混ぜないように
気をつけなければ,と思っています。

 

 

★2つ目の不具合

 

これは,焦っているときに
よくやってしまう失敗なのですが,

 

絵の具を重ねるとき,
先に塗った絵の具がなま乾きの状態で
上に絵の具を置こうとすると,
下に塗っていた絵の具がとれてしまいます。

 

アクリル絵の具を塗り重ねるのは,
前の絵の具が完全に乾いてからにしましょう。

 

写真は,つい最近私がやった失敗です。

いつもは下塗りの絵の具を厚く塗ってから
その上に下絵を転写するのに,
今回は違う手順でやってみようと思ったら
慣れなくてこんなことになってしまいました。

 

下塗り中,筆の線が残ったから
境目をぼかして消したいと思い,

絵の具の付いた筆で撫でたら
なま乾きだった下の色が溶けてきました。

 

布を使ってぼかそうと思ったら
どんどん絵の具が取れて…

 

しかたがないので,
一度全部ふき取ってから
ドライヤーで完全に乾かし,塗り直すことに。

 

下描きの鉛筆まで消えてしまったので,
もう一度転写しなおしです。トホホ…

 

 

 

アクリル絵の具は乾燥が早いので,
ぼかすというのは難しいです。

 

水分が多く絵の具がまだ全然乾いてない時に
筆先で撫でてぼかすことはできます。

 

が,少し乾きかけたら
もうさわれません。

 

アクリル絵の具は,
ビニールのように変化しつつある
なま乾きの時には
重ねたりいじったりしてはいけないのです。

 

わかっていたのに,やっちゃいました。

 

どの時点からさわれないかの
見極めも難しいです。

 

一度塗ったら細かいことは気にせず,

乾いてから重ねればいいと思いましょう。

 

特に,背景など面積が広いところは,
せっかく均一に塗れていたものが
台無しになってしまいますから。

 

乾いているか不安な時は,
ドライヤーでカラッと乾かすと〇。

 

 

乾燥を遅らせる

リターディングメディウム

というものがありますが,

 

これは主に厚塗りの時に使うものらしく
水彩風に絵の具を薄めて使う私は
ほとんど使ったことがありません。

 

今回の場合にも,あまり向いてないですね。

 

 

★3つ目の不具合

 

最後は,うまくいかなくて
つつきまわしているとき起こる現象です。

 

完全に乾いていれば重ね塗りが容易で,
何度でも重ねられる絵の具なのですが,
締切前の急いでいるときに
とんでもないことが起こったことがあります。

 

もうすぐ画材屋さんが展覧会に出品する
作品をとりに来られるという日,
私はまだ作品が仕上がっていなくて
焦って描いていました。

 

主役の女性の顔が
何度重ねてもうまくいかなくて,
溶剤をつけた筆で,何度も
重ねた絵の具の上を
撫でまわしていました。

 

下に塗っていた絵の具は
完全に乾いていました。

 

しかし,ドライヤーで乾かすこともせず
何度も濡れた筆で上から撫でまわしたことで
乾いていた絵の具が
ふやけてしまったようです。

 

絵の具の層がいきなり
キャンバスからまるごと剥がれて
白いキャンバス地が現れました。

 

手についた絵の具が水にふやけて
パックのように剥がれるあの現象が,
キャンバスの上で起きてしまったのです!

 

絵の具同士の結合は強いけれど,ふやけると
キャンバスとは離れてしまうのですね。

 

パニックになりましたが,
泣いている暇もありません。

 

何層にも重ねていた女性の肌の
ポッコリ穴の開いた部分だけに
水分をあまり入れない絵の具で修正をし,
何とか出品することはできました。

 

「顔がダメね」

展覧会の批評会で言われました。
応急処置はやっぱりバレますね。

 

 

こんな失敗をしないために,

下の絵の具が乾いていても
水気のある筆で
長時間つつきまわしてはいけません。

 

うまくいかないときは
一度ドライヤーで完全に乾かして,
仕切り直しましょう。

 

 

⑥ どんな筆や道具を買えばいい?
柔らかい布も必需品!

 

次に,

絵を描き始める前に準備するものについて
お話しします。

 

・アクリル絵の具
・筆,ハケ(ナイロン製がお手ごろ)
・キャンバス(紙・キャンバスボードも可)
・ペーパーパレット
・水入れ(部屋が3つに分かれたもの)
・柔らかい布(薄い色がよい タオルは×)
・小皿(使わなくなった食器でよい)
・ドライヤー(作品を乾かす)

・高画質の大きい写真
(FUJIFILM画彩がオススメ)

いろんな写真用紙を試した結果,
これにプリントしたものが
一番本物の色に近く,きれいでした。

・構図を考えた用紙

 

 

では,それぞれどんなものがいいのか
ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。

アクリル絵の具については,
これからずっと絵を描くのであれば

② オススメのアクリル絵の具
で紹介したホルベインかリキテックスの
12色セット

を準備されるといいと思います。

 

★ 筆

 

筆には様々な素材のものがあります。

 

豚やイタチなど,動物の毛を使ったもの,
ナイロンを使用したものなど。

 

形は平筆,丸筆に大きく分けられ,
それがまた,毛の長さや筆先の形で
いろんな種類に分かれます。

 

使う絵の具や描く絵の大きさなどによって
使う筆は全く違います。

 

では,アクリル絵の具には
どんな筆が適しているのでしょう。

 

絵の具の使い方にもよりますが,
水で溶かして使う場合,
あまり硬くなく,柔らか過ぎないものが
使いやすいです。

 

ナイロン素材のものが使いやすく,
丈夫で値段も手ごろです。

 

ゴッホの描く油絵のように,
あまり水をつけず
しっかり絵の具をつけたいのであれば,
少し硬めの筆を選ぶといいでしょう。

 

 

使っていくうちに自分に合うものが
分かってくると思いますが,

最初はナイロン製の平筆を大小1本ずつ
先の揃う細い丸筆を1本。
くらいあればいいかなと思います。

 

F3号の絵を描くのであれば,
平筆8号と4号,
丸筆4号くらいから初めてみましょう。

 

それともうひとつ,

下塗りや背景をムラなく処理するために,
大きめの平筆か厚みのないハケがあれば
便利がよいです。

 

これもナイロンなど
柔らかめのものを使いましょう。

 

写真に写っている筆は

 

インターロンのナイロン筆
平筆8号
平筆4号
丸筆4号   です。

これも通販で購入しました。
(600円代~900円代)

 

 

ハケのような大きいものは

アルテージュ キャムロンプロ
550 1 1/4

これは背景や下塗りに使います。

 

ずいぶん前に
画材屋さんで購入したものと思われます。

 

私のには1800円の値札が付いていますが,
通販で検索すると,現在は
メーカー小売価格が3000円くらいに
なっています。

 

チョット高いですね。

でも,あるととても便利だと思います。

 

 

それぞれの人の描き方によって,
使いやすさは違ったりするので,
描いてみて,

 

もうちょっと大きいのもあったら便利だなー

とか

 

厚塗りしたいから
もうちょっと硬い筆も欲しいなー

 

など感じたときは,
違う素材や大きさのものを
買い足してみてください。

 

基本的に,動物の毛でできたもののほうが
ナイロンより高価です。

 

 

ずいぶん安い筆もあると思いますが,
子供が学校で使用するタイプのものは
できれば使わないほうがいいです。

 

教材用に安価に作ってあるため,
毛が抜けたり切れたりして,
絵にくっつき,乾燥すると取れなくなります。

 

特に,古くて劣化したものは
絶対使わないようにしましょう。

画面が毛だらけになってしまいます。

 

 

★キャンバス

 

何も書いてないキャンバスは
油絵具専用の場合が多いです。

必ず
アクリル絵の具兼用キャンバス

であることを確認して買うように
しましょう。

 

油絵専用キャンバスでも
アクリル絵の具が付くことは付きますが,
定着しにくいので,剥離する危険があります。

 

もし間違って買ってしまった場合は

ホルベックス

というもので油の部分をはがせば
使用できるようです。

でも,これ,私もやったことがないので
調べてみたのですが,
うまくはがせるか不安。。。

とにかく,間違えて買わないよう
気をつけましょう。

 

 

★ペーパーパレット

 

パレットも,木やプラスチック,金属など
いろんな素材のものがありますが

なんといっても楽なのは
ペーパーパレットです。

 

パレットの形の厚紙の上に
水をはじく加工をされた紙が
たくさん貼り付けてあります。

 

使って汚れたら,
その一枚だけはがして捨てればいいので
片付けがとても楽です。

 

大きさもいろいろあるので,
使いやすいモノを選びましょう。

私は写真のものを使っています。

 

ホルベインのペーパーパレットS

持ちやすく,広さもこれだけあれば十分です。

 

 

縁が高くないから,
背景などたくさんの絵の具を溶かすと
流れ落ちるんじゃないの?

 

そうなんです。

 

そんな時に陶器の小皿を使います。

 

どんなものがいいかは,
あとの小皿のところでお話しします。

 

 

時々,ペーパーパレットを
1枚だけ先にはがして
ペラペラにして使う人がいますが,
これは絶対ヤメましょう。

 

まず,手に持つことができなくなるし,
風が吹くと飛びます。

 

絵の具が付いたものが飛ぶと
作品や服,家具などに絵の具が付き,
とんでもないことになりますよ。

 

ペーパーパレットは使った後で,

汚れた紙だけはがして捨てましょう。

 

 

他の素材のパレットは,
それぞれ以下の理由でお勧めしません。

 

☆木のパレット

油絵の具なら乾燥が遅いから
これでもいいかと思いますが,

アクリル絵の具はすぐ乾くので,
取れなくなって掃除が大変。

 

☆プラスチック

アクリル絵の具は成分がアクリル樹脂なので
仲間であるプラスチックと
大変くっつきやすい性質があります。

 

学校で使うアクリルガッシュのセットには
価格や壊れにくさなどの理由で
プラスチックのパレットが付いていますが,
2時間の授業の間でも
使い終わってすぐ洗わせないと,
取れなくなって苦労する生徒が出てきます。

ゆっくり絵を描きたいなら
これも使わないほうがいいです。

 

☆金属のパレット

水彩絵の具用の金属のパレットを
持っていますが,
アクリル絵の具を使うようになってからは
使っていません。

 

小学校の時,

「色の近い順にパレットの小さい部屋に
全部出して並べてから塗り始めましょう」

と習いましたが,
アクリル絵の具にそのやり方は通用しません。

 

使う色だけ出すようにしないと,
すぐに固まって
使えなくなってしまうのですから。

 

小さい部屋がたくさんあっても
あまり意味がなく,
逆に使い勝手が悪いのです。

 

 

★ 水入れ

 

これは子供用でも大丈夫ですが,

水を入れるところが3つくらいに
分かれているものを選びましょう

 

写真の水入れは,
娘が小学校で使っていたものです。

 

これは結構便利です。

 

水を入れるところが3つに分かれているし,
筆を立てる穴も付いています。

 

水を入れるところが
3つに分かれていることは重要です。

 

まず1の部屋で筆を洗い,
次に2の部屋で洗い,
それでもまだ色が出るようなら
3の部屋で洗う。

 

この手順を踏むことにより,
筆に残った絵の具で
次に使う色が濁るのを防ぎます。

 

 

濁った水をつけることで
絵が濁ることもあります。

 

きれいな部屋の水を選んで
筆に含ませることもできますね。

 

置いた筆が転がって
作品や机を汚すことがあるので,
できれば筆を立てるところがついている
助かります。

 

 

柔らかい布

 

実際描き始めてみるとわかりますが,
絵の具を使っていると

塗った絵の具をちょっと拭き取りたい

筆に含ませた水が多すぎたから吸い取りたい

チョットこすって,境目をぼかしたい

など,布があれば助かる場面が
多々出てきます。

 

しかも,乾きの早いアクリル絵の具が
乾く前にやらなきゃいけないので,
急を要するのです。

 

その時になって慌てて,
手ごろな布がなくて間に合わない

なんてことにならないように
最初から手元に布を置いて描き始めましょう。

 

どんな布が適しているかですが,

・柔らかいもの(でもタオル地は×)

・できれば薄い色がよい(できれば白)

という感じです。

 

硬い布は水を吸いにくく,
撫でたところに布が通った跡がつく上,
キャンバスの絵の具を必要以上に
削り取ったりもします。

 

タオル地は柔らかく,
水分もよく吸いますが,
細かい繊維が残りやすく,
絵の具と一緒に固まって取れなくなるので
避けましょう。

 

古いTシャツや肌着などを
使いやすい大きさに切ったものを
何枚か用意しておくのがいいです。

 

どのくらい絵の具がついているか
わからないと使いにくいので,
できれば薄い色のものがいいです。

 

汚れたら替えましょう。

 

今回の写真では,
手ごろな捨てる服が見つからなかったので
古いキッチンペーパーを入れています。

なければこういうものでも大丈夫です。

ティッシュはもろくて
よれたカスが残ることがあるので
やめたほうがいいと思います。

 

 

小皿

 

これは先ほどパレットのところで
お話ししたように,
たくさんの絵の具を溶かすときに使います。

 

絵の具が溢れないように,
少し深さがあるものがいいです。

 

家にある使わなくなった食器でよいのですが
これも色がついていると
混色したときなど
絵の具の色がわかりにくいので
白いものがいいです。

 

私は,コレを使っています。

 

縁に凸凹があって,
筆を置いても転がらないのが便利です。

 

 

ドライヤー(作品を乾かす)

 

重ね塗りをするとき,
早く乾かして次の作業にと思ったら
ドライヤーを使いましょう。

 

アクリル絵の具は速く乾くので,
そんなに長時間かける必要はありませんが,
完全に乾いてから次の絵の具を重ねないと
下の絵の具が取れてしまうので,
あったほうが便利です。

 

ヘアドライヤーで大丈夫です。
汚さなければ髪と併用しても大丈夫ですが,
水がかかって故障なんてことになると
いけないので,
あまり高級なものはもったいないかも。

 

私は以前使っていた安いドライヤーを
絵専用に置いています。

 

 

高画質の大きい写真

 

色をつけるときには,
鮮明に映った
できるだけ描く大きさに近い写真が必要です。

 

家でプリントしたり
スナップ写真を拡大コピーしたりするのなら

FUJIFILMの「画彩」

という用紙がオススメです。

 

その写真の色を見て色を作るので,
できるだけ本当の色に近づけたくて
いろんな写真用紙を試した結果,

これにプリントしたものが
一番本物の色に近く,きれいでした。

 

 

構図を考えた用紙

 

第3回で写真を貼り付けた構図の用紙,
捨てずにとってありますか?

 

これも最後まであったほうが安心です。

 

特に,
画面に何枚かの写真を貼って合成した場合は
これを見ないと全体の状態が見えず,
進んでいくべき方向がわからなくなります。

 

これも傍に置いて色をつけていきましょう。

 

 

以上,

アクリル画を描くにあたって
必要なものを紹介しました。

道具は揃いそうでしょうか?

 

どこに売っているかわからない場合は
とにかく通販!

 

ひとつのお店で1度にまとめて買えば
金額によって送料が無料になったりするので
バラバラに買うより
必要なものをまとめて注文しましょう。

 

 

まとめ

 

アクリル画を描く前に

どんなものを揃えればいいか,
だいたいわかりましたね。

 

色をつけ始める前に,
全部揃えておきましょう。

 

どこに売ってるかわからないものは,
とりあえず楽天やアマゾンなど
通販で検索してみてください。

 

細かいものは
送料のほうが高かったりするので,
ひとつのお店で
送料がかからない金額になるように,
できるだけまとめて注文するのがお得です

 

 

道具がそろったら,
新品のものはすぐ使えるように袋から出し,
家にある布や小皿,ドライヤーなども全て
絵を描く場所に集めてから
描き始めてください。

 

布は最初から,手のひらに入るくらいの
使いやすい大きさに切っておきましょう。

 

全部そこらへんにあるから大丈夫,
なんて思っていると失敗の元。

 

アクリル絵の具は乾燥が早いので,

「布,布!」

なんてバタバタしてるうちに,
乾いてぼかしができなかった,
なんてことになります。

(これは,私がよくする失敗です。
皆さんはやらないでくださいね。)

 

 

今回の講座はこれで終わりです。

 

第5回では
アクリル絵の具を使って色をつけていきます。

 

写真や動画を見ていただきながら,
できるだけわかりやすくお話していこうと
思います。

 

では,また

第5回の講座でお会いしましょう!