こんにちは,麻真です。
第1回の講座では,
絵の資料にする写真の撮り方について
お話しさせていただきました。
思い通りの写真は撮れたでしょうか?
なかなか…という方も
多いのではないでしょうか。
焦らず,ペットさんと楽しみながら
写真を撮ってもらえたらいいなと思います。
さて,第2回は,
額装して飾ることを考えて,
画材や絵のサイズを決めようという
お話をしようと思います。
今回は,額装して絵を飾った経験が
少ない方のためのお話になります。
なぜ,絵を描く前から?
そう思われた方もいらっしゃるでしょう。
完成した肖像画を飾りたいと思ったとき,
テキトーな画材や大きさで描いていると,
合う額縁が見つからないなんていうことが
起こる可能性があるのです。
心を込めて描いた絵は
是非飾っていただきたい。
だから,描き始める前に額のことを
知っておいてもらいたいと思いました。
最初にこのお話をしようと思ったのは,
以前,忘れられない失敗をしてしまった
ことがあるからです。
水彩画教室をしていた時のことです。
教室の展覧会をすることになり,
展示をするため,生徒さんたちが
会場に作品を持ち寄られました。
水彩画はデッサン額というタイプの額に
入れるのですが,絵を始めたばかりで
ご存じない方がいらっしゃり,
どこで買ったらいいかもわからなかった,と
ジグソーパズルの額に入れてこられたのです。
ジグソーパズルの額は縁が細く,
絵と縁の間に余白を作って
作品をより美しく見せる役割をする
マットも入っていません。
大きさも合っていないので,
絵の周りに変な隙間ができていました。
時間をかけて描かれた作品でしたが,
専用の額に入れられた方たちの作品と
並べたとき,合わない額のせいで
ずいぶん見劣りしてしまいました。
私が額についてお話することを忘れたため,
その生徒さんに,とてもつらい思いを
させてしまったのです。
そんな失敗を二度としたくないと思い,
絵を描き始める前に
額のお話をすることにしました。
紙に描くか,キャンバスに描くか,
色紙に描くかによっても
額縁の種類や売っている場所,
値段も違います。
このことを知らないで
合わない額縁に入れてしまうと,
力作もパッとしない感じになってしまいます。
収まるべき額縁に入れて初めて,
絵は本来の輝きを放つのです。
せっかく時間をかけ,
愛情を込めて描くのですから,
作品が一番引き立つ額装をして
飾りたいですよね。
この,第2回の講座では
① 使う画材による額縁の種類と
売っている場所・だいたいのお値段
② 額縁が手に入りやすく
初心者が描きやすいサイズは?
③ 額縁を選ぶとき気をつけること
など,お話ししようと思います。
これを読んで,使いたい画材や
描きたい大きさを考えてみてください。
実際に額を買うのは,絵ができて
色や雰囲気を合わせてからのほうが
作品に似合うものを選びやすいです。
先に額の話をしたからと言って,
慌てて買ってしまわないでくださいね。
では,始めていきましょう。
① 使う画材による額縁の種類と
売っている場所・だいたいのお値段
あなたは,どんな画材で
肖像画を描きたいと思っていますか?
一言で絵といっても,
いろんな絵の具や画材があり,
それによって額装の仕方も変わります。
使う画材や描く絵の大きさが
まだ決まっていないなら,
先に額縁のことを知り,
飾るときのことを考えておくことで,
決めやすくなります。
私は主に,
油彩・アクリル兼用キャンバスに
アクリル絵の具で絵を描いています。
なので,最後までこの講座に
おつきあいいただけそうで,
まだ使いたい絵の具が
決まっていないのであれば,
アクリル絵の具を選ばれることを
お勧めします。
アクリル絵の具をお勧めする理由や,
どのアクリル絵の具を選べばいいかなどは,
第4回の『アクリル絵の具と筆の選び方』
でお話ししています。↓
https://d-marron.com/lesson4
これからアクリル絵の具を購入される方は,
必ずここに目を通してから買ってください。
いろんなメーカーのものがあり,
用途の違う「アクリルガッシュ」という
ものもあるので,紛らわしいです。
キャンバスも,アクリル絵の具に
適していないものがあるので注意!
アクリル絵の具を使用する場合は,
買う前にアクリル兼用かどうかの
確認が必要です。
知らないで買うと使えないものも出てくるので
必ず知識を身につけてから道具を揃えましょう。
では,使う画材による額縁の種類と
売っている場所・だいたいのお値段
についてお話ししていきますね。
1.キャンバスに描いた油絵やアクリル画
「油彩額」というタイプの額を使用します。
2.水彩絵の具で水彩用紙に描く場合
「デッサン額」という額に入れます。
油彩額とデッサン額,
どこが違うかというと,作品の厚みです。
平面的な紙に比べ,
キャンバスは小さいサイズで
20㎜程の厚みがあります。
油彩額には,この厚みのあるキャンバスが
すっぽりとはまる空間が作ってあるのです。
構造が全く違い,キャンバスをデッサン額に
入れることはできません。
この「油彩額」「デッサン額」は,
文具店やホームセンターなどでは
取り扱っていません。
画材を専門に取り扱っている画材店で
買うことになります。
私もそうですが,田舎に住んでいると
「近くに画材店なんてないよー」
という方も多いと思います。
私も今は,すべて通信販売を行っている
額縁の専門業者さんで買っています。
画材店で買うよりもかなり安く手に入ります。
Amazonや楽天などで
「油彩額 F3号」などと検索しても出てきます。
この後②で紹介する,
ペットの肖像画に適した大きさであれば,
小さいサイズでは3,000円くらいから
ずいぶん高いものまで揃っています。
私はあまり高い額を買ったことはありません。
安いからといって粗末な物が
届いたことはないので,
高いものを買わなくても大丈夫です。
絵と雰囲気が合ったものを選びましょう。
通販では,写真で見たのとイメージが
違う場合もありますね。
見て買わないと不安という方は
最寄りの画材屋さんを探してみてください。
初めてだと,額縁にどうやって絵を入れたら
いいかわからない場合もあるので,
画材屋さんに絵を持って行って,
入れ方を教えてもらうのもいいと思います。
頼めば画材屋さんが
入れてくださると思いますが,
これからずっと描いていくなら,
自分でできるようになるほうがいいので
やり方は見ておきましょう。
3.次に,色紙(しきし)に描く場合。
色紙専用の額縁があります。
画材店や額縁専門店でも扱っていますが,
ホームセンターなどでも見かけます。
通販でもいいですね。
比較的安価で,1,000円くらいからあります。
ちょっとしたプレゼントの絵などには,
いいかもしれません。
4.ケント紙に描く場合
イラスト風に描く場合など,
ケント紙を使用するという方も
いらっしゃると思います。
ケント紙のサイズはA版 B版があります。
額縁専門店でも取り扱っていますが,
気軽に飾りたいのであれば,
100円ショップにその規格のものが
かなり大きいサイズまでそろっています。
大きいものは100円ではありませんが,
手ごろなお値段で手に入れることができます。
文具店やホームセンターで見かける
賞状用の額は,
ケント紙の規格に合っていますが,
これはやはり賞状用なので,
絵を入れてもしっくりきません。
せっかく新調するなら,
作品に合うものにしたほうがいいと思います。
紙に描く場合は,
描く前に,入れたい額のサイズに合わせて
紙をカットしておけば,
その額に入れることもできます。
紙は好きな大きさに切ることができるので,
その点は融通がききますね。
最後に注意したいのが,
小中学校などで使う画用紙の
八つ切・四つ切というサイズ。
聞き馴染みがあるかと思いますが,
これは結構面倒です。
合う額がないわけではありませんが,
あまり見ないし,
間違いが起こりやすいです。
調べてみましたが,
ネット通販などで「八つ切額」と検索すると
写真の八つ切サイズの額が出てきます。
紙を八つに切ったものが八つ切なのですが,
元の紙の大きさが様々なので,
八つ切と呼ばれる大きさが複数あるのです。
なので,
額を買う際に手違いが起こりやすく,
お勧めしません。
そして,この画用紙,傷みやすいです。
折り目が付きやすいし,
消しゴムをかけるだけで
表面が荒れたりする場合もあります。
学校で裏表を逆に習っている人が
結構多いのもその原因です。
凸凹があるほうが表,
ツルツルのほうが裏です。
裏に描いてしまうと,
消しゴムをかけたら毛羽立ちます。
絵の具も,表のほうが気持ちよく付きます。
そのような間違いも起こりやすいので,
八つ切・四つ切の画用紙ではなく,
水彩用紙などをお勧めします。
額縁の違いは,
言葉で説明されただけでは
わかりにくい点も多いと思います。
次の額縁屋さんの断面図が
大変分かりやすかったので,
参考にしてみてください。↓
https://gaku-yasui.co.jp/knowhow/150/
② 額縁が手に入りやすく
初心者が描きやすいサイズは?
キャンバスのサイズ表を見て,
「このサイズで描きたい」と思い,
出入りの画材屋さんにキャンバスを注文
したことがあります。
ところが,そのサイズはほとんど使われない
大きさだったらしく,
キャンバスも額縁も特注になって,
ずいぶん高くついてしまいました。
サイズ表に描いてあるからといって,
すべてのサイズのキャンバスや額縁が
常に置いてあるわけではないんですね。
というわけで,
ここでは,既成品の額があるサイズで,
初心者が描きやすい大きさを
紹介していきたいと思います。
通販なら受注生産で様々なサイズを
販売しているお店もあるので,
こだわりのサイズがあって
通販が大丈夫な方は
そちらを調べてみてもいいかもしれません。
私はそういうお店を利用したことが
ないので,ここでは触れずにおきます。
1.油絵やアクリル画を描くキャンバスと,
水彩画用紙の場合
画材店などで見かけるキャンバスや
水彩画用のスケッチブックには
F6号とかF8号とか書いてあります。
これがキャンバスや水彩用紙の
規定のサイズになります。
初めて描くなら,
F3号(273×220㎜)から
F8号(455×380㎜)くらいが
描きやすいでしょう。
飾るときのことを考えても,
このくらいのサイズの絵が額縁に入ると,
日本家屋に飾りやすい大きさになります。
私はペットの肖像画を描くとき,
できるだけ実物大で
全身を描くようにしているのですが,
今まで描かせてもらった
ネコさんや小型犬さんは,だいたい
F3号からF4号(333×242㎜)で
ちょうどよい感じでした。
等身大で全身というのは
私のこだわりなので,
別にそうする必要はありません。
小さく描いたり,
顔だけ描くのもいいと思います。
ネコさんの背景に部屋の様子を入れて
F8号に描かせてもらったことも
ありますし,
36㎏のワンちゃんを等身大で描くと
飾る場所に困るので,飼い主さんの希望で
F8号に小さく描かせてもらったことも
あります。
私は,本物のその子がそこにいるような絵に
したくて等身大にこだわっているので,
我が家の大型犬(?)は
F20号(727×606㎜)や
F15号(652×530㎜)に収まっています。
これは,額に入るとかなりの大きさになり,
一般家庭に飾るのは難しい感じです。
これらは展覧会等に出品する作品で,
普段生活するスペースには飾っていません。
風景に使われるPサイズ・Mサイズという
細長いキャンバスや,
Sサイズという正方形のものもありますが,
これも既製品の額は少ないです。
動物を描くなら,
一般的によく使われるFサイズが
やはり使いやすいと思います。
Fサイズの中でも,F2号やF5号というのは
ほとんど使われないそうで,
額縁も既製品がないから
やめたほうがいいようです。
F3,F4,F6,F8から選びましょう。
特に,初めて描く方には
転写作業のしやすさからも,
F3号がお勧めです。
転写作業については,次の章
「第3回 魅力ある構図作りと転写方法」
で詳しくお話ししています。
2.色紙
色紙は小さいものもありますが,
最初は,あまり小さいと描きにくいかも。
普通サイズ(242㎜×273㎜)
が描きやすいでしょう。
値段が高く,
表面がザラザラしている色紙は,
消しゴムをかけると表面が荒れるし,
水が広くにじむようにできているので,
色を付けるのも難しいです。
色紙に絵を描くなら,
100円ショップなどにある,
表面がツルツルしたものがいいでしょう。
③ 額縁を選ぶとき気をつけること
額縁を買うときに気をつけてほしいことが
いくつかあります。
まずは,額縁の表面に入っている
ガラスやアクリルについてです。
ガラスが入った額は,当然のことですが,
落ちるとガラスが割れます。
家に飾る場合,
地震のときや吊りひもが切れたりしたとき,
落ちて割れると危険な場所は
避けて飾らないといけません。
展覧会や公募展などに出す場合は,
自分以外の人が作品を運んだり
展示したりします。
落ちるなどの事故が起きた時のため,
ガラスが入ったものは,
出品不可となっている場合も多いです。
アクリルは落としても
破損することが少ないし,
もし割れても
粉々に飛び散ることはありません。
ガラスよりアクリルが入った額のほうが
少し高くはなりますが,
アクリルのほうをお勧めします。
買うときに,どちらが入っているか確認して
買うようにしましょう。
通販では見落とすこともあるので要注意です。
画材屋さんで買う場合は,
ガラスが入っていても,少し料金を足すと
アクリルに交換してもらえる場合があるので
訊いてみるといいと思います。
アクリルには紫外線カット効果があるものも
あります。
紫外線が当たると絵の具の色があせるので,
UVカットは嬉しいですね。
通販などでもその場合は記載してあるので,
それを見て選ぶのもいいと思います。
でも,いくらUVカットのアクリルが
入っているからと言って,
直射日光が当たる場所に飾るのは
NGですよ!
100%カットしてくれるわけでは
ありませんからね。
額を買うときにもう1つ気をつけたいのは,
縁やマットの幅です。
「このくらいの大きさの絵を描くから,
できたらここに飾ろう」
もうイメージが膨らんできた方も
いらっしゃるでしょう。
ここでちょっと気をつけてください。
油彩額やデッサン額に入れると
作品はかなり大きくなるので,
思っている場所には
収まらないかもしれません。
多くの額には,絵と額縁の間に
マットという部分があります。
額縁とマットの幅を足すと,
4方にそれぞれ50㎜~100㎜くらい
大きくなります。
F3号の絵なら
キャンバスは273㎜×220㎜ですが,
額縁の幅が広ければ,
470㎜×420㎜くらいに
なってしまうということです。
F8号くらいなら
幅広の額でもいいのですが,
小さな絵の場合,
あまり幅の広い額を選ばないほうが
バランスがいいかもしれません。
通販の写真は,どの大きさの額のものか
わからない場合もあるので,
写真では幅が広いのか狭いのか
判断できないことがあります。
私は必ず,縁やマットの幅の数字を見て
買うようにしています。
マットのない「仮縁」という
タイプもありますが,
マットがあるほうが絵が美しく見えるし,
保存性もいいようです。
以上に気をつければ,
あとは描いた絵と色や雰囲気が合うものを
選べばよいと思います。
新しい絵を描いたら
中身を入れ替えるかも,
なんていう場合は,
シルバーや白,
木の薄い色などを選んでおくと,
いろんな絵に合わせやすいでしょう。
自分の絵にどんな色の額が合うか
よくわからない場合も,
これらを選ぶと無難ですね。
まとめ
今回は,額装して飾ることを考えて,
画材や絵のサイズを決めよう
というテーマで,
①使う画材による額縁の種類と
売っている場所・だいたいのお値段
②額縁が手に入りやすく
初心者が描きやすいサイズは?
③額縁を選ぶとき気をつけること
などをお話ししました。
どんな画材で描いて,どんな額に入れて,
どこに飾りたいというようなイメージが
わいてきたでしょうか?
最初は気軽に飾りたいという方は
お近くの100円ショップで
どんな大きさのものを売っているか見て,
そこにある額に入るサイズの紙に描くのも
いいかもしれません。
額縁も楽しみながら選んでみてくださいね。
今回の講座はここまで!
第3回は,魅力ある構図作りと転写方法
についてお話ししようと思います。
それでは,また!
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